ネイティブの英語を聞き取るには
日本人にとって英語を聞き取るのが難しい大きな理由に再度考察したい。先ず、一番の原因はフォニックスが十分に身についていないからである。次に、英語には日本語と違う音(オン)がたくさん有り、また音域もが随分と違い日本語と重なるところが殆どないからである。例えば、英語の母音は24個あり、英語の周波数(英語:2000~12000hz、米語:750~5000hz)は日本語(125~1500hz)よりもかなり高い。当然のことながら、日本人にとって英語の音を聞き取ること、及びネイティブに正しく伝わるレベルで発音するのは大変難しい作業である。
3つ目の理由として、英語を聞き取る時に、理解しておいた方が良いシステムがある。日本語にない母音や子音をマスターするだけでは不十分だと考える。何故なら、話し言葉の中では、音が連続すると様々なことが付随して起こるからだ。今回は、7つある中から1.Contraction(短縮)、2.Linking(連結)、3. Elision(脱落)もしくは(Deletion(消失)について纏めてみた。これらのシステムを知っているとリスニングに大いに役立つ。
1.縮約(Contraction)
先ず一つ目のシステムは縮約(Contraction)である。縮約とは、主語の位置にある名詞や代名詞とbe, have, 助動詞の組合せ、及びbeや助動詞とnotの組合せにおいて、2語を1語に縮めることである。例えば、I amをI’m, I haveをI’ve、I willをI’ll、I wouldをI’d、he isをhe’s、it isをit’s, My manager willをMy manager’ll、His name isをHis name’s、are notをaren’t、can notをcan’t、did notをdidn’t、is notをisn’t、Here isをHere’s、what isをwhat’s、how isをhow’s、when isをwhen’s、などがある。人称代名詞とbe動詞の縮約の例で、He’s の発音について注意して欲しいことがある。heを[hi:]と言うように長母音で発音しないと、hisとなってしまうのである。
2.連結(Linking)
2つ目は、音の連結(Linking)である。英語は日本語と違って、語と語を滑らかに繋いでいく傾向がある。このことを連結という。語尾子音+語頭母音の組合せの場合や、語尾母音+語頭母音の組み合わせの場合生じる。例えば、care of, an apple、stand up、look at、catch up、come in, sum up, log in, stop it, a lot of, a cup of tea, hang on、you and me、などがある。
3.脱落(Elision)とDeletion(消失)
3つ目は、音の脱落(Elision)とDeletion(消失)である。脱落とは、音が消えてなくなる現象で、主に語と語が結合する場合に発生し、発話の速度が速くなれば起きやすい。音節を減らそうとして、母音が弱化したり、子音が脱落することもある。例えば、want to, stopped talking, white chalk, put them, good luck, this shop, good-bye, good morning, hot dog next day, hard time, sit down, take care, drop pencils, a hot tea, what timeなどがある。
4.ストレスについて
日本語と違う英語の音、音域そしてシステムについて述べたが、更に日本語と違うリズムとイントネーションについて少し触れておきたい。単語に母音が2つ以上含まれる時は、必ずその中のどれか1つの母音(音節)を強く発音するが、文章を音読したり発話する時もこれと同じような現象が起きる。つまり、文章が2語以上からなる場合、その中のある語は強く(stress word in the sentence)、ある語は弱く読む。英語のリズムは強弱(日本語は高低)が特徴で、話し手が重要な情報を持つと考える語が強勢を受ける。一般的に、強勢を置く語は、名詞、代名詞、動詞、形容詞、副詞等がある。強勢を置かない語としては、代名詞、冠詞、助動詞、前置詞、接続詞等がある。私の体験として、以前は英語の講義やニュースを聴く時に一字一句聞き漏らさないように頭のスイッチをオンしていたが、最近は無意識にスイッチをオフして強勢された(音のボリュームが大きくなった)語句を聴けるようになってきた。その方がスイッチをずっとオンしているより楽である。
これらのシステムやリズム・イントネーションを知らないのと、知っている単語でも聞き取れない場合がある。繰り返すようだが、知っているだけでは不十分である。学習者自ら正しく発音できていないと、聞き取ることが難しくなるのは皆様も理解いただけると思う。繰り返し発音の練習をして、更にネイティブの音を聞いて聞き取れるまで訓練する必要がある。