副題:英語の思考回路を作る方法を探して
- 第1章 語彙を増やすには
- 第2章 発音力を磨くには
- 第3章 文法力を身につけるには
- 第4章 英語で考えるとは
- 第5章 小学校のフォニックス指導
はじめに
「私はなぜ英語をスラスラと話せるようにならないのか」。その答えを私はやっと見つけたような気がする。私は中学・高校・大学の計8年間英語と向かい合ってきた。そして外資系航空会社に30年間勤め、英語が必要とされる時、例えば外国人マネージャーとの会話や会議、英語を話す外国人客との会話の時などは英語でコミュニケーションをとった。退職後福岡に移り住み、20年間小学生、中学生、高校生に読み・書き・文法・リスニングを指導した。2019年にセミリタイアをして、5年間福岡市内の小学校でボランティアとして英語クラスをお手伝いした後、現在は近くの英会話教室で園児や小学生を指導している。このように長く英語とつきあってきたが、まだ何かやり残したことがあると感じている。私の現在の英語のリスニング力は、日本語字幕なしにBBCニュースの70%~80%を理解できるが、ドラマとなるとそのパーセンテージはぐんと下がる。スピーキング力に関しては、話す機会がほとんどない。それでも日常会話であればある程度できると思うが、内容が必要な会話やディスカッションはあまり自信がない。今は、NHKのラジオ英会話を何度も何度も聞いて、基本になる語句や例文を音読暗唱して独学している。
前述したように、私はリスニング力と比べるとスピーキング力はかなり劣る。リスニング力の半分程度、いやそれ以下のスピーキング力しかない。それは何故なのか。一般的に第二言語は、インプットされたものを知識として定着させ、最終的にアウトプットにつなげていくプロセスを経て習得される、と言われている。であれば、私の場合インプットは、英語力の主要素である「語彙」、「発音」、「文法」については十分とは言えないがあるほうだ。そして、アウトプットできる量というのはインプットの量で決まり、アウトプットできる量というのはインプットの量より少なくなる、と言われている。私自身の例を見て、これらの理論に私はなるほど納得だ。それでは、私が考えるスラスラと話すのに必要な3要素、「語彙」、「発音」、「文法」に焦点を当てながら、英語の思考回路を作る方法を探してみたい。「語彙」と言ってもその構成要素は大きく広がる。例えば、4つのスキル(聞く・話す・読む・書く)に必要な語彙数(伝える、質問する、答えるなど)とその運用力が求められる。「発音」の場合、ネイティブスピーカーに正しく伝えるだけが目的ではなく聞き取る場合にも必要になる。正しい発音ができなければ聞き取れる確率は下がる。なぜなら、言語野が認知していない音は雑音として流れてしまう。「文法」の場合、語順を理解し運用できなければネイティブスピーカーに正確に伝わらないし、聞き取るのも難しくなる。
今まで、私は「なぜ日本人は英語が苦手なのか」について考えられる原因をHPのブログなどで発信してきた。スピーキングの前にリスニング力を育む必要があると考えてきた。それには、臨界期以前に児童たちにフォニックスの基礎指導を始めることが重要である、と教育委員会に何度も何度も提案してきた。フォニックス指導がすべてではないが、私の英語力は、リスニング力はある程度あるが、スラスラと中身が伴う話す力はあまりない。私の学習方法は適切ではなかったと今は考えている。スラスラと話せるための学習方法はあるのだろうか。私と同じような結果にならないように、児童たちのみならず多くの学習者に応用できる学習方法を探してみる。ライフワークとして、スラスラと話し聞けるようになる方法を探ってみる。 なお、サブタイトルを「英語の思考回路を作る方法を探して」にしたが、その理由に触れておく。1999年(平成11年)10月19日、NHKの『クローズアップ現代』で『どうすれば英語が話せるか』という番組が放送された。そのなかで植村研一浜松医科大学名誉教授は大脳生理学の「ウェルニッケ言語野」ご研究の成果である大脳のスキャン写真を基に、「英語を上手に話せる人」と「そうでない人」との違いを説明している。英語を上手に話せる人は、英語を話す時は、日本語とは違う言語野で処理している。「そうでない人」は、英語を話す時も日本語と同じ言語野で処理している。言い換えると、日本語と英語を担当する部局はそれぞれ独立していることが示された。言語中枢はそれぞれの言語によって個別に作られ、日本語を母国語とする私たちは日本語の言語中枢を持っている。日本語の世界で生活する日本人にとって大変難しい作業ではあるが、私は脳に英語の言語中枢が独立できるように、児童たちを指導すればよいと考えるようになった。また、脳の伝達は聴覚中枢から出発し、話す中枢、読む中枢、書く中枢へと繋がっている(注1)ので、言語中枢を作るにはまず聞くことから始めて、話して読み書きへと進むのが脳科学的には正解だと考えている。小学校でのフォニックス指導の体験(2023年度~2024年度)をいかして、フォニックス指導を中心にしたカリキュラムを作成してみたい。新学習指導要領では音と文字の関係について小学校で指導しないように記されているが、英語音を吸収できる最適な年齢である「臨界期:9歳ごろ」にフォニックスを指導できないのは残念である。2025年は小学校英語を導入して5年になるので、新学習指導要領に縛られず検証して日本人学習者の弱点を補強できるフォニック指導を導入してほしい。第二言語に対する言語野の機能は使用しないと徐々に退化していくようである。日本人教師でもできる、いや日本人教師だからこそできると確信している。
次回から第1章から始めますので、引き続きお読みください。ご感想をいただければ幸いです。takedayoshi@joy.ocn.ne.jpまで。
