日本語もしっかりしていないのに英語を習ってもいいの?
英語は幼児期から学び始めよう!
日本語もしっかりしていないのに英語を習ってもいいのか。この疑問は、1999年グリーンウッドをオープンする時から私の頭の中にあった。ちゃんとした日本語を身につけることは大事だし、その時期を待つとすれば何才でスタートするのがよいのだろうか、並行して英語を勉強すると日本語の習得に影響があるのだろうか、など納得できる答えを見出せないままにスタートした。そんな折、偶然に録画したNHKの「クローズアップ現代」がその答えを提供してくれた。番組タイトルは「どうすれば日本人は英語を話せるようになるのか?」だった。
植村研一、脳神経外科医の主張
番組の中に、脳神経外科医の植村研一氏が、アメリカ留学経験者のバイリンガルの学生と、英語は読み書き中心に勉強した東大出身の学生を使って実験をする場面がある。彼が月刊誌『言語』(1996年)に発表した内容によると、1990年代の後半には、ウエルニッケ言語野が言語の理解の中核を担っていることは判明していたそうだ。又、アメリカの脳外科の専門家による」研究では、多言語使用者の場合には、そのウエルニッケ言語野がさらに細かく分かれていて、例えば英語とスペイン語のバイリンガルの場合、言語中核の中で英語とスペイン語が混戦しないよう、離れたところにそれぞれの中核があることが分かった。もう一つ言語にかかわっている脳の部位はブローカー言語野というところで、こちらは発音する時の運動能力にかかわっているとのこと。このブローカーとウエルニッケが結びつくことによって言語能力が形成されるので、外国語教育の目的は、ウエルニッケとブローカーが結びついた各外国語別の言語中核を形作ることだと植村教授は主張している。
植村研一氏による実験の結果によると、、、
英語と日本語を別々に聞いた時に、ウエルニッケ言語野のどの部分が反応しているのか、血液の流れで調べる。バイリンガルの学生の場合、英語を聞いたとき反応する箇所と日本語を聞いたときに反応する箇所は離れていて、それぞれ違った箇所だった。一方、読み書きを中心に勉強した東大出の学生の場合は、英語を聞いたときと日本語を聞いたときに反応する箇所はほとんど重なり合い、同じ箇所だった。バイリンガルの学生は、英語を聞いたとき、英語から直接(日本語の介入なしに)意味を理解していることが分かった。一方、東大出の学生は、英語をひとまず日本語に訳し、そのうえで英語の意味を理解しているのが分かった。この実験で、学習の仕方によって日本語と英語を担当する部局をそれぞれ独立していることが示された。英語を話すときは英作をしてから口に出す、英語を聞いたときは和訳をしつつ意味を理解する日本人が多いと思う。
言語野の中に英語担当の独立した部局を創ろう!
私は、これらのことから、母語である日本語がしっかりしていない時期に、英語を習い始めても日本語の学習にさほど悪影響を与えないのではと考えるようになった。むしろ、早期に始めるのが、言語野に英語の音を聞き分けることができる部局を作れる可能性は高い。遅くとも聴力が強い9才ごろまでにスタートすることを勧めたい。9才ごろまでに言語野を使用しなければ、母国語以外の機能は退化していくようだ。受験のための英語に重点がおかれる環境にあっても、言語野に英語を担当する独立した部局を創り、使える英語を身につける努力を惜しまない方が良いと思う。繰り返しますが、学ぶ順番は聞いて話すを最初にして、読み書きはあまり焦らない方が良いと思う。英語を聞き取れる耳ができると、それは永遠の宝物になります。