その原因を考えるきっかけ
英語嫌いの児童が多い。4年生の教室に、今年度の児童の目標が教室の後ろの壁に貼られている。今年は国語を、数学を、理科を頑張ろう、という目標はたくさんあるが、残念ながら英語を頑張ろうという目標は見当たらない。気になるので何人かにその理由を尋ねてみた。少し恥ずかしそうに、難しいからだという答えが大半であった。以前5,6年生にも同じように尋ねたことがあるが、その時は難しいけれど好きだという声も多少あった。困ったな~、どうしたらいいのか自問自答が続く。何が難しいのか、その原因を考えてみる。ゲストティーチャーとして4年目を迎える私にとって、その原因と考えられる多くのことが思い浮かんでくる。This is My opinion, but I can’t speak for everyone.
あるある疑問点と改善点が、、、
先ず、教科書の中身自体がかなり難しいと思う。上学年生を対象に、2020年4月から英語が正式な教科として格上げされ、5,6年生は英語を一つの教科として評価される。一方、3,4年生は正式な教科ではない外国語活動として学習しているので、嫌いになる可能性は少ないはずだ。念のため3,4年生の教科書を検証してみると、当時5,6年生が使用していた内容を少し易しくして移行されているが、語彙の難しさはあまり変わっていない。難しくて嫌いになる児童が増えるのは不思議ではない。教科書の内容はバラエティーに富んでおり、指導者が工夫すれば楽しい授業になると思うが、内容が広範囲に渡りすぎており、語彙が実生活で使う頻度に沿っていないことが多い。年齢の知的レベルの発達に見合った内容や自然な会話の流れ、表現が望まれる。担任教師、英語専任教師、外国語補助員が指導するわけだが、私には彼らの指導力にかなり個人差あるように見える。例えば、英語が専門ではない日本人担任教師に一定のレベルを求めるのは無理があるようだ。スキルアップのための研修不足、業務多忙のため準備時間不足など、やむを得ない事情があり楽しく授業を進める余裕が持てないのが現実である。また、日本中の児童が1種類の同じ教科書で学んでいるのは画一的すぎるし、学習指導要領に沿って教えざるを得なく、指導者の自由な裁量がほとんど許されていないことに私は疑問を感じている。
解決するには、、、
次に、児童たちに「なぜ英語は難しく感じるの?」、と具体的な答えを求めて質問すると、「発音するのが難しい」、「聞き取るのが難しい」、「単語を覚えられない」などの答えが返ってくることが多い。これらはほとんど全ての日本人学習者にとって、永遠の課題である。日本語と音域が違う英語を、正しく発音する、正確に聞き取ることは難しい作業である。私が知る限り、小学校での今の音声指導法は、児童らがデジタル教材の音や外国語指導助手の発音を聞いて、オウム返しに声を出しているだけ。耳の良い一部の児童には効果があるかも知れませんが。そうではなく、日本人教師が、分かりやすい平易な言葉で音の出し方を説明することが重要である。そのほうが児童らは発音の仕方を正確に知ることができると考える。日本人教師はネーティブより効果的に指導できる可能性がある。これらが現行の音声指導法を改善したいと強く思うようになった理由である。私は、20年間の英語教室での指導、10年間に及ぶ北九市の私立小学校へのPLSシステム導入への参画、ケンブリッジ大学認定教師資格コースの修了などを経験して、日本人学習者にとってどのように取り組むのが一番なのか、着実に力を伸ばせるのか、一つの確信にたどり着いた。オンラインレッスンを通して、一人でも多くの児童と出会い、少しでもお手伝いできることを願っている。
他にもある、英語嫌いになる原因が、、、
なぜ英語嫌いになるのか、上記の他に3つの点に触れておきたい。先ず、高校生を指導しているときに感じたことである。二人の学生は、「学校の先生は、私たちにとって英語が難しいことを分かってくれない、そして私たちが分かっていないことを先生は分かってくれない」と訴えた。何か頭をガツンと叩かれた思いをした。こんなことが長く続くと誰だって英語嫌いになるだろう。指導者は学習者の気持ちに共感し、頑張ればできるレベルの授業を提供するように心掛ければならないと思う。次に、児童らの記憶力についてである。仮に今日10個の単語を覚えたとして、翌週まで何も復習しなければ、1週間後にいくつ覚えているだろうか。私の体験からでは、良くて3~4個、1~2個の児童も少なくない。児童たちも大人と同じように忘れるのである。忘れないためには効果的に復習するしかない。最後は、専門家たちは、一つの外国語を身につけるには500時間から2000時間が必要であると主張している。3,4年生は週1回、年間35週、45分間授業なので合計1,575分、約26.3時間にすぎない。最低の500時間を満たすには、速くて10数年かかることになる。もし、ある程度使える英語を身につけたいと思う人は、もっと英語に触れる時間を作らなければならないのは明白だ。それを補うには、やはりホームワークをするしかないのではないだろうか。ところが、さあホームワークをしようとした時に現状では児童は大きな問題に直面する。ホームワークをするための教材や道具が自宅にない。一日10分でいいので、英語に取り組めるためのホームワーク教材と、それと関連した音声指導のためのCDを児童に与える必要があると考える。ピアノの練習をする時にピアノが必要であるのと同様に、英語の練習をする時にはCDが不可欠である。発音の練習をするにはCDの音を聞いて真似て発声するのが一番良い。英語を音読・暗唱することが、英語を自分の物にできる近道である。
以上、最近感じることを述べたが、あくまでも私個人の意見である。改善するためにはconstructive criticismも大事だと考えている。