小学3年生からのフォニックス英語

フォニックス基礎指導を受けた児童たちの声

はじめに

 私は通常のレッスンに影響を与えない範囲で、4年生を対象にしてフォニックスの基礎指導をする機会を得ました。時期はちょうどアルファベットの小文字を学習する2023年10月であった。翌年の2月まで、合計17回、各クラス10分~15分、合計約200分、担任先生方の協力を得て当初目標にした内容の約90%を消化できました。3文字単語の読みの練習にもう少し時間が必要であったと感じています。10月に始める時に、児童たちに今回の特別レッスンの目標を伝えました。目標を達成すると、「英語の発音がとても上手になるよ!」、「英語の音が聞き取れるようになるよ!」、「3文字程度の単語であれば読めるようになるよ!」等と。その時の児童たちの表情は半信半疑で聞いていたように感じました。今回の指導内容と順序に関しては、私の提案として最後に纏めてありますので、最後までお読みいただきますようお願いいたします。それでは、フォニックスの基礎指導を受けた児童たちのアンケート結果からご報告いたします。

アンケート結果①

フォニックスの基礎指導を受けた児童たちにアンケートの形で感想や意見を答えていただきました。その集計結果を以下に記します。明示的な指導の必要性をご検討するための参考資料としてご利用ください。

「よし先生の特別レッスン(フォニックスの基礎)を受けて、何か変化はありましたか?それぞれの質問に答えてください。数字を〇でかこんでください。(無記名)」

フォニックス学習に関するアンケート結果 (4年生、2023年10月~2024年2月、17回、毎回10分~15分、合計約200分)

1.よし先生のレッスンは楽しかったですか。回答数は82名、%はすべて四捨五入。

82名中、「楽しかったと思う」、「少し思う」の合計が71名(87%)であった。「あまり思わない」が若干あったが、かなりの児童たちがクラスを楽しんだようである。

2.アルファベット(a~z)の発音がじょうずになった。回答数は83名。

83名中、「じょうずになったと思う」、「少し思う」の合計が75名(90%)であった。「わからない」が若干あったが、学習者本人が自分の成長に気づくことは、やる気につながると考えられる。

3.母音(a, e, i, o, u)をせいかくに発音するのが難しい。回答数は83名。

 83名中、「母音の発音は難しいと思う」、「少し思う」の合計が47名(57%)であった。一方、「ふつう」、「あまり思わない」の合計が、36名(43%)であった。やはり、日本人学習者にとって母音の発音は特に難しいことが分かった。しかし、36名の児童がやればできる感触を与えてくれた。時間が許す限り、練習、復習を繰り返したが、今後の課題として取り組みたい。なお、子音が持つ個々の音は、リスニングの練習の中で耳から学習するのが初心者にとっては学び易いと考えます。子音の個々の音素を記憶するのは難し過ぎると思います。この段階では、abcの名前読みを正確に身に付けることを優先する方が、フォニックスを学習する時に役立つと考えます。

4.CDでネイティブの音を母音別に聞いたとき、その母音が含まれているかどうか聞き取れるようになった。回答数は77名。

77名中、「母音の音が聞き取れるようになったと、とても思う」、「少し思う」の合計が70名(91%)であった。予想外の嬉しい結果だった。フォニックス学習の目的は、「文字の音」を学習して読めるようになることである。しかし、音を聞き取る力、リスニング力にも効果があることが分かった。正確に発音ができれば聞きとれる確率は上がると思われる。abc26文字の名前と、2文字(母音+子音)ベースの発音練習を終えると、リスニング練習に入ることを勧めます。そして、並行して3文字単語の読みに進むのが理想だと考えます。

5.3文字の単語(たとえば、dog)であれば、発音できるようになった。回答数は83名。

83名中、「3文字単語を発音できるととても思う」、「少し思う」の合計が69名(83%)であった。練習時間が十分にとれず心配していたが、予想以上の良い結果であった。2月の最後のレッスン時に、児童の希望で全てのクラスが3文字の読みに挑戦した。その時にアンケートをとっておれば、「とても思う、少し思う」の数字は確実に上がっていたであろう。読めた瞬間に多くの児童たちが、自信に似たような表情を浮かべたのが印象的であった。

6.今までより英語の発音がじょうずにできるようになった。回答数は80名。

 80名中、「発音がじょうずになったととても思う」、「少し思う」の合計が76名(95%)であった。発音の大切さを強調してきた指導者として、嬉しい結果であった。英語嫌いになる理由の一つとして、発音が難しいからというのがよくある。一人でも多くの児童が英語好きになって欲しいと願う。

アンケート結果②

よし先生の特別レッスンを受けてみて、感想、意見、質問など自由に書いてください。(無記名)。

貴重なコメントをたくさん児童からいただきました。その中からいくつかの感想をご紹介します(順不同)。

Aさん:「前よりも発音が少しできるようになってよかったです。これからもがんばります。」

Bさん:「よし先生の特別レッスンのおかげで英語がとくいになりました。」
Cさん:「レッスンで前より母音が聞きとれたりするようになりました。」

Dさん:「発音の仕方を教えてくれて発音が上手にできるようになれたので良かったです。」

Eさん:「さいしょは英語がにがてだったけど、だんだん英語が言えるようになってうれしいです。」

Fさん:「聞きとるのがむずかしかったけどたのしかったです。」

Gさん:「発音が上手になったから、もっと上手になりたいです。」

Hさん:「よし先生の授業はとても楽しいけど、聞き取るのはあまりうまくできませんでした。」

Iさん:「外国に行ったときにいろんな人に話ができるように少しなったと思います。」

Jさん:「文が長い英語を読み取るコツを教えてほしいです。」(クラスの中で私の考えを伝えた)

Kさん:「もともとあまり英語がとくいじゃなかったが、レッスンを受けてとて

も楽しく、きれいに発音できるようになった。宇宙飛行士のゆめにつながったと思った。」 

Lさん:「英単語が前より読めるようになったので、よし先生のレッスンを受けて良かったなと思いました。」

Mさん:「すごくわかりやすいレッスンを受けて、いろいろな音が聞きとれるようになりました。それをいかして5年生でもがんばります。いままでありがとうございました。」 

Nさん:「a, e, i, o, uの言い方をマスターしてとてもうれしかった。」

Oさん:「よし先生が、いつも発音を言ってくれる時に、いつも口を見せて「口はこんなふうに動かすんだよ!」などを言ってくれるから、とても分かりやすいです。それに、前よりもっともっと発音がうまくなりました!!」

Pさん:「べろをつける、つけないで単語の言い方がじょうずにできる、できないがよくわかった。」

Qさん:「分からないところ、少しまちがっているところをていねいに教えてくれてすごくうれしかったです。」

Rさん:「さいしょはぜんぜんわからなかったけど、まえよりたのしくおぼえました。」

Sさん:「今まで単語を読むのが下手だったけど、先生が一文字一文字に音があるとおっしゃったので、覚えてみると発音も聞く力もグングンのびたし、単語を読む事ができて、書けるようになりました。Thank you!」

Tさん:「特別レッスンを受けて、母音の発音がとてもうまくなってうれしいで

す。今までより英語が好きになりました。」

Uさん:「よし先生のおかげで英語の発音を上手にできるようになりました。」

Vさん:「よし先生のレッスンをうけて、よい勉強ができてとてもうれしいです。5年生になってもがんばります。」

Wさん:「よし先生はりゅう学をしましたか?」

Xさん:「英語はいつ完ぺきに話せるようになったんですか。」

結論

アンケート結果を見た私の感想は、児童たちは想像以上に音に敏感で、スポンジが水を吸収する如く「英語の音」を吸収していたという驚きでした。フォニックス指導についての専門家の報告書が紹介されていますが、今回の結果はその内容を裏付けたように感じています。そのいくつかを紹介しますと、「音声指導の開始時期は、9歳の壁と呼ばれる時期があり、9歳までにスタートするのが望ましい。遅くなればなるほど、言語野の機能は退化する可能性があります。」(樋口忠彦、2017年、植村研一、2009年、長谷川修治、2013年)。「脳科学の観点から、学習の順序はリスニングから始めるのが効果的である」(植村研一、2009年)。「小学校の5年生や6年生は、アルファベット文字の読み書きや、文字と音の関係を学ぶのに適した年齢です、フォニックス指導は、この時期に有効です。」(山見由紀子、2016年)。「フォニックス指導を継続的かつ体系的に実施することが重要です。正しい発音のルールを学ぶことで、未知の単語に出会った時に正しい発音を推測する能力が養われます。」(松土清、2021年)。
 以上のことから、このような素晴らしい効果をもたらすフォニックス学習を取り入れない理由は何もないと考えます。日本人学習者にとって、フォニックス学習は大きな武器となり得るものです。繰り返しますが、ネイティブが聞いてOKが出るレベルの発音を目指して学習して欲しいと思います。なぜなら、発音は相手に正確に伝えるだけでなく、聞き取りの際にも大きな影響を与えるからです。今年は2020年の導入から5年目にあたりますので、文部科学省や教育委員会には過去の検証を基に、必要に応じて大胆な改善を行って欲しいと切望しています。なお、フォニックス教材や指導方法の例については、約20年間にわたり私の英語教室で使用していたものです。

私の提案

私の提案は、中学年から(現行では、アルファベットの大文字・小文字を習得する時期なので)、アルファベット26文字の名前読み(aを/ei/と読む)と書き方から始め、児童たちに正確な発音力を身につけさせることです。アルファベット26文字の発音は、フォニッゥスを学習する時の基礎として大いに役立ちます。ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して欲しいと考えています。それができれば次に、母音(a, e, i, o, u)が持つ音を正確に発音できるまで練習します。そして、母音(a)と各子音の2文字の組み合わせの発音を練習します。例えば、ba, ca, da等。この2文字の練習はローマ字の読み方と似ている(英語の発音とは異なるが)ので、児童にとって取り組みや易いと考えます。この方法であれば、最後のzaまで児童たちは比較的抵抗なく発音ができるようになります。もちろん、指導者として各組み合わせ(baからzaまで)を正確に発音して、児童たちに練習を促さなければなりません。この段階の目標は、母音aとの組み合わせだけではなく、他の母音との組み合わせも練習することも大事です。

さて、ここで指導者として難しい課題に直面します。それは、児童たちにアルファベットの個々が持つ音を如何に提示し、身に付けさえることができるかです。担任が一人でする場合の不安は「発音」に関することであり、「綴りと音」を結びつけるには正確に「音」出す必要があります。日本人学習者に広く使用されている方法の一つに、シンセティック・フォニックスがあります。多くの児童は十分に語彙を持っていない(持っている場合はアナリティクス・フォニックスが使用される)ので、単語を構成する音素とその代表的な1文字または2文字の綴りと対比させていき、無意味語も含め、音を足して読んでいく方法です。これは、アルファベットが持つ個々の音(音素)の読み方を練習した後で、合成された単語をそれぞれの音素を組み合わせて発音します。例えば、dogト言う単語は「d」,「o」,「g」という3つの音素からできています。しかし、多くの日本人には「do」は1つの音として認識する傾向にあるので、初心者にとっては、フォニックスを学ぶ基礎である5つの母音は別にして、子音が持つ個々の音素を習い始めから覚えるのは非常に困難であり、かなりの負担なると思います。なぜなら、国語で、「あいうえお」を学習する時に、「ん」を除いて母音+子音の2文字ベースで学習するからです。フォニックスの基礎を学ぶ順番として、母音+各子音の2文字の組み合わせの発音を最初に勧めるのは、これらの理由からです。

 それでは、個々の子音が持つ音をどのように身に付ければ良いのであろうか、身に付けることができるのであろうか。焦る必要はありません。無意味な音素をチャンツやCDを聞いて覚える方法がありますが、それよりも確実に記憶に残り、スペルの推測にもつながると思われる方法があります。それは、3文字の単語を読むことに挑戦させるプロセスで指導できます。2文字ベースの読みに慣れてくると、3文字の単語を読むことに挑戦するのが良いと考えます。3文字単語を読むときに、指導者が子音の音を児童に聴かせ練習する程度で良いと考えます。たとえば、catの「t」、dogの「g」、bedの「d」、penの「n」、capの「p」など。指導者ができる限り正確に子音の音素を発音して練習すると良いと思います。このように、文字と音の関係が分かり始めると、多くの生徒はフォニックス指導の最初のゴールである3文字の単語を読めるようになります。そして次に述べるリスニングのドリルを通して子音の音素を身に付ける方法があります。

次に、文字と音の関係を学習しながら、「聞く」耳を育てる練習に入るのが理想的です。この「聞く」トレーニングの目的は、英語の音を聞き取れるための「耳」を養成することです。一定の発音レベルが達成できれば、「聞く」トレーニングに入る準備が整います。英語は日本語と比較して音域が高く、同じ音が存在しないため、多くの児童が苦戦を強いられます。最初のリスニングの挑戦は、子音の音を聞き取るドリルが取り組みやすいと思います。児童の知っていそうな単語を選び、CDを聞いて最初のアルファベットを聞き取ったり、最後のアルファベットを聞き取る練習をする。この場合、単語の文字数は3文字と限らなくてよい。例えば、最初の文字 banana, girl, pencil, 最期の文字 rabbit, cap, bird等。初めての挑戦の時は、答えとなるアルファベットを示し、その中から答えを選ぶ形式を勧めます。この方法が、私が勧めする子音の個々の音素をリスニングから学習する方法です。意味のない音素を丸暗記して読みにつなげるより、児童たちにとってはるかに取り組みやすいことと、集中して聞くので「耳」が育つと考えます。

さて、いよいよ母音の聞き取りの練習に入ります。基本的にはCDを聞いて、どの母音なのか聞き取る練習と指定の母音の音が含まれているか、いないかを聞き取る練習が考えられます。どの母音が含まれているかの練習は、先ず母音が単語の最初の位置に来る場合が考えられます(文字数は3文字以上でもよい)。elephant, apple, octopus, insect, umbrella等の単語が良い。次に、3文字単語の真ん中に位置するケース、map, pet, six, fox, sun, jam, hen, wig, log, cup等たくさんあります。

このように、CDを聞いて、最初の文字、真ん中の文字、最後の文字などを聞き取る練習が効果的です。これにより、26文字のアルファベットが持つ音を聞き取ることができるようになります。言い換えますと、音からスペルを推測できるようになるのです。つまり、音を聞くだけでスペルが分かり、既習の単語であれば意味が理解できるのです。そして、耳で聞き取れると、この力が単語を読む力に繋がっていきます。フォニックス指導の上で重要な点を繰り返しますが、ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して練習することです。発音のレベルがその域に達していない場合、ネイティブの音を聞いた時に本人が認識している音と一致しないため、聞き取ることが難しくなる可能性が高くなります(文脈から推測できる場合もありますが)。

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