小学3年生からのフォニックス英語

小学校英語教育を変える指導試案書 第4章

私の指導法 あなたもできる日本人児童にあった指導法

4-1: 現状について

 日本人はなぜ英語が苦手なのかについては、長年にわたり議論されてきましたが、未だに具体的な解答には至っていない。永遠の課題かもしれない。多くの日本人が8年以上もの間、中学校、高校、大学で英語と取り組んできたにも拘わらず、聞けない、話せないという状況にある。では、なぜ話すことが苦手なのか?それは、話す努力が足りないからではなくて、聞く訓練が不足しているからだと考えられる。文字で書いてもらえば知っている単語でも、音として聞いた時に聞き取れないケースが多い。文脈から意味が分かる場合もあるが、音からスペルが推測できないのが主原因だと考えられる。相手の言っている内容が聞き取れなければ、会話は成り立たないし、続かない。聞く力を持たないままコミュニケーション力(自分の思いや考えを伝える、質問する、答える)を身につけようとしても、限定的な進歩しか期待できない。日本人にとって英語を習得するには、先ず英語を聞き取れる「耳」を創る努力をしながら、「耳」で学ぶのが一番の近道だと私は考える。「耳」で学ぶとは、日本人の赤ちゃんが周囲の大人たちの話す音を聞きながら、徐々に母語を理解していくプロセスを指す。このプロセスは理想だが、我々の対象となる児童は早くて8~9歳になる。小学校の中学年や高学年を対象に、「耳」から学べる教材、カリキュラムが必要になる。

4-2: 目標設定

目標は、

  • アルファベット26文字、大文字・小文字を正しく発音ができる(読める)、丁寧に書ける、名前を聞いて正しく書けるようになる。
  • 3文字単語(CVC)を発音できる(読める)ようになる。
  • 短い単語を聞いた時、そのスペルが推測できて書けるようになる。
  • カタカナ英語から離れ、英語らしい発音ができるようになる。

4―3: 指導内容と順序

スタートの第一歩は、中学年から(現行ではアルファベットの大文字・小文字を学習する時期なので)、アルファベット26文字の名前読み(aを/ei/と読む)と書き方から始め、児童たちに正確な発音力を身につけさせることだ。アルファベット26文字の発音は、フォニッゥスを学習する時の基礎として大いに役立つ。ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して欲しい。それができれば次に、母音(a, e, i, o, u)が持つ音を正確に発音できるまで練習をする。そして、母音(a)と各子音の2文字の組み合わせの発音の練習をする。例えば、ba, ca, da等。この2文字の練習はローマ字の読み方と似ている(英語の発音とは異なるが)ので、児童にとって取り組みや易い。この方法であれば、最後のzaまで児童たちは比較的抵抗なく発音ができるようになる。もちろん、指導者として各組み合わせ(baからzaまで)を正確に発音して、児童たちに練習を促さなければならない。この段階の目標は、母音aとの組み合わせだけではなく、他の母音との組み合わせも練習することも大事である。

さて、ここで指導者として難しい課題に直面する。それは、児童たちにアルファベットの個々が持つ音を如何に提示し、身に付けさえることができるかである。担任が一人でする場合の不安は「発音」に関することであり、「綴りと音」を結びつけるには正確に「音」出す必要がある。日本人学習者に広く使用されている方法の一つに、シンセティック・フォニックスがある。多くの児童は十分に語彙を持っていない(持っている場合はアナリティクス・フォニックスが使用される)ので、単語を構成する音素とその代表的な1文字または2文字の綴りと対比させていき、無意味語も含め、音を足して読んでいく方法である。これは、アルファベットが持つ個々の音(音素)の読み方を練習した後で、合成された単語をそれぞれの音素を組み合わせて発音する方法である。例えば、dogと言う単語は「d」,「o」,「g」という3つの音素からできている。しかし、シンセティックフォニックスをそのまま小学生の児童に使用するのは勧められない。理由は、日本人にとって子音と母音を切り離して認識することはとても難しいからです。多くの日本人には「do」は1つの音として認識する傾向にある。初心者にとっては、フォニックスを学ぶ基礎である5つの母音は別にして、子音が持つ個々の音素を最初から覚えるのは非常に困難であり、かなりの負担なると思う。フォニックスの基礎を学ぶ順番として、母音+各子音の2文字の組み合わせの発音を最初に勧めるのは、これらの理由からだ。

 それでは、個々の子音が持つ音をどのように身に付ければ良いのであろうか、身に付けることができるのであろうか。焦る必要はない。無意味な音素をチャンツやCDを聞いて覚える方法があるが、それよりも確実に記憶に残り、スペルの推測にもつながると思われる方法がある。それは、3文字の単語を読むことに挑戦させるプロセスで指導できる。2文字ベースの読みに慣れてくると、3文字の単語を読むことに挑戦するのが良いと考える。3文字単語を読むときに、指導者が子音の音を児童に聴かせ練習する程度で良いと考える。たとえば、catの「t」、dogの「g」、bedの「d」、penの「n」、capの「p」など。指導者ができる限り正確に子音の音素を発音して練習すると良いと思う。このように、文字と音の関係が分かり始めると、多くの生徒はフォニックス指導の最初のゴールである3文字の単語を読めるようになる。そして次に述べるリスニングのドリルを通して子音の音素を身に付ける方法がある。

次に、文字と音の関係を学習しながら、「聞く」耳を育てる練習に入るのが理想的だ。この「聞く」トレーニングの目的は、英語の音を聞き取れるための「耳」を養成すること。一定の発音レベルが達成できれば、「聞く」トレーニングに入る準備ができる。英語は日本語と比較して音域が高く、同じ音が存在しないため、多くの児童が苦戦を強いられる。最初のリスニングの挑戦は、子音の音を聞き取るドリルが取り組みやすいと思う。児童の知っていそうな単語を選び、CDを聞いて最初のアルファベットを聞き取ったり、最後のアルファベットを聞き取る練習をする。この場合、単語の文字数は3文字と限らなくてよい。例えば、最初の文字 banana, girl, pencil, 最期の文字 rabbit, cap, bird等。初めての挑戦の時は、答えとなるアルファベットを示し、その中から答えを選ぶ形式を勧める。この方法が、私が勧めする子音の個々の音素をリスニングから学習する方法である。意味のない音素を丸暗記して読みにつなげるより、児童たちにとってはるかに取り組みやすいことと、集中して聞くので「耳」が育つと考える。

さて、いよいよ母音の聞き取りの練習に入ります。基本的にはCDを聞いて、どの母音なのか聞き取る練習と指定の母音の音が含まれているか、いないかを聞き取る練習が考えられます。どの母音が含まれているかの練習は、先ず母音が単語の最初の位置に来る場合が考えられる(文字数は3文字以上でもよい)。elephant, apple, octopus, insect, umbrella等の単語が良い。次に、3文字単語の真ん中に位置するケース、map, pet, six, fox, sun, jam, hen, wig, log, cup等たくさんある。

このように、CDを聞いて、最初の文字、真ん中の文字、最後の文字などを聞き取る練習が効果的だ。これにより、26文字のアルファベットが持つ音を聞き取ることができるようになる。言い換えると、音からスペルを推測できるようになる。つまり、音を聞くだけでスペルが分かり、既習の単語であれば意味が理解できる。そして、耳で聞き取れると、この力が単語を読む力に繋がっていく。フォニックス指導の上で重要な点を繰り返すが、ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して練習して欲しい。発音のレベルがその域に達していない場合、ネイティブの音を聞いた時に本人が認識している音と一致しないため、聞き取ることが難しくなる可能性が高くなる。(文脈から推測できる場合もあるが)。以上のことから、このような素晴らしい効果をもたらすフォニックス学習を取り入れない理由は何もないと考える。日本人学習者にとって、フォニックス学習は大きな武器となり得る。繰り返すが、ネイティブが聞いてOKが出るレベルの発音を目指して学習して欲しい。なぜなら、発音は相手に正確に伝えるだけでなく、聞き取りの際にも大きな影響を与えるからだ。今年は2020年の導入から5年目にあたるので、文部科学省や教育委員会には過去の検証を基に、必要に応じて大胆な改善を行って欲しいと切望している。なお、フォニックス教材や指導方法の例については、約20年間にわたり私の英語教室で使用していたものである。

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