日本人児童に適した指導法と教科書作り
はじめに
小学校教師のためのフォニックス指導書を作成することにした。20年間の英語教室での体験と2020年から約4年間小学校でのゲストティーチャーとしての体験に基づいたものだ。その理由は、3年ほど前から、現行の音声指導法を改善する必要性を強く感じているからだ。今の音声指導は私の知る限りは、チャンツ、CDの音を聞き取るドリル、ALTの発音を聞いてオウム返しで声を出すのが中心になっている。この方法では、聞き取れたり、正確に発音できるのは一部の耳の良い児童だけであり、自分自身でその調音法に気づくことを待つのは現実的ではない。現行の指導法を明示的指導法に改善するように教育委員会に4回ほど提言をしたがその反応は鈍く、このままでは児童たちが持っている潜在能力を十分に引き出せないという焦りの気持ちを持ち始めている。日本人学習者にとって絶対的な解決策はないかもしれない。しかし、過去を検証し、何事にも必ず起こる失敗を考証することから次の一歩が踏み出せると信じている。私が、フォニックス指導の改善の必要性を感じるのは、次の3つの主な理由からである。
先ず、新学習指導要領についての疑問点がある。指導要領には、発音指導の中で、「音声と文字を関連付けて指導すること」(文部科学省、2018、p130)が求められている。しかし一方で、「発音と綴りを関連付けて、発音と綴りの規則を指導することを意味するものではないことに留意する」とある。「発音と綴りとを関連付けて指導すること」は、中学校の外国語科における指導事項(p130)、とある。音声と文字の関係を指導して、引き続き発音と綴りの関係を指導しないのは私には疑問である。児童たちの「読んでみたい」、「発音してみたい」、「読めた、発音できた」「間違えた、そう読むのだ」等という自然発生的な学習意欲と学ぶ機会にブレーキをかけていることになるのではないだろうか。文部科学省の音声指導の目標は児童たちの挑戦しようとする機会を削いでいるように見える。挑戦する姿勢の中に「学ぶ瞬間」があり、そのプロセスこそが成長に繋がるのではないだろうか。彼らの潜在能力を過少評価しているように思われる。大人たちが彼らの能力や限界を一方的に決めるべきではない。上手に球を投げれば児童たちは期待に応えてくれるものだ。私の経験から、彼らには言語習得において無限の可能性があると確信している。
次に、私は1999年7月に英語教室を開校するにあたり、日本語も定着していないのに英語を習ってもいいのか。正しい日本語を身につけることは大切だし、その時期を待つとすれば何才で始めるのがよいのか、日本語と平行して英語を勉強すると日本語の習得に影響があるのか、等々の疑問を持っていた。そんな折、偶然に録画したNHKの「クローズアップ現代」が一つの答えを提供してくれた。番組のタイトルは「どうすれば日本人は英語を話せるようになるのか?」だった。番組の中に、脳神経外科の植村研一氏が、アメリカ留学経験者のバイリンガルの学生と、英語は読み書き中心に勉強した東大の学生を使って実験をする場面がある。植村氏の実験結果は次のようであった。英語と日本語を別々に聞いたときに、ウエルニッケ言語野のどの部分が反応しているのか、血流の流れで調べる。バイリンガルの学生の場合、英語を聞いたとき反応する箇所と日本語を聞いたときに反応する箇所は離れていて、それぞれ違った箇所だった。一方、読み書きを中心に勉強した東大の学生の場合は、英語を聞いた時と日本語を聞いた時に反応する箇所はほとんど重なり合い、同じ箇所だった。バイリンガルの学生は、英語を聞いた時、英語から直接(日本語の介入なしに)意味を理解していると考えられる。一方、東大の学生は、英語をひとまず日本語に訳し、そのうえで英語の意味を理解していると考えられる。この実験で、学習の仕方によって日本語と英語を担当する部局はそれぞれ独立していることが示されたと言える。英語を話すときは英作をしてから口に出す、英語を聞いたときは和訳をしつつ意味を理解する日本人が多いと思われる。私も置き換えるスピードは速くなったが、やはり一部日本語が介入する。それでは、どのような手段で英語を学べばいいのだろうか。植村教授は、私が英語学校で取り入れていた同じ学習方法を『言語』(月刊誌、1996年)中で次のように述べている。「日本では、読み書きから入り、ヒアリングが一番後になっていますが、私が英語の先生だったら、ヒアリングから入ります。脳の伝達構造からいくと、ウエルニッケの聴覚中核から言語は出発し、そこから読む中核、話す中核、書く中核へと繋がっていきます。ところが、読みを教え、書きを教えて、しゃべりは教えない、聞くのも教えないでは、脳の伝達構造から言えば逆なことをやっているわけです」これらのことから、母語である日本語の基礎が出来ていない時期に英語を習い始めても、日本語の学習にさほど悪影響を与える可能性はなく、むしろ音声指導からスタートする重要性を私は再認識した。そして幼児教育でよく使われる「臨界期」という言葉にも触れておきたい。脳には学習に最も適した時期があり、その時期を過ぎるとどれだけ努力をしても限界が生じてしまう。臨界期とは、その最終ラインのことを意味する。特に言語教育で用いられている言葉だが、英語だけでなくすべての言語教育の臨界期は、9歳くらいまでとされている。9歳ごろまでに言語野を使用しなければ、母国語以外の機能は退化していくようだ。小学校で言えば、現行のカリキュラムであれば、中学年、高学年で音声指導をスタートするのが適切だと考えられる。 3つ目の理由は、フォニックス指導を受けた児童たちの声が私の背中を押してくれた。幸運なことに、2023年10月より2024年2月までの約5か月間(計17回、約200分)、福岡市内の小学校で4年生の3クラスを対象にフォニックスの基礎指導をする機会を得た。そして、フォニックスの基礎指導を受けた児童たちにアンケートの形で感想や質問に答えてもらった。その指導記録と集計結果については次の章で詳しく紹介するが、明示的指導の効果を確認することができた。「音声指導を始める適齢期は小学中学年だ」という確信になろうとしている。
フォニックス指導の記録
導入までの道のり
それが実現したのは、2020年6月からゲストティーチャーを始めて4年目の2023年10月だった。音声指導の改善を校長先生に提案を続けてきたが、ついにOKが出た。力強い味方を得て勇気づけられた思いがしたが、同時に重い責任を感じた。思い出せば、一年前の10月に同校の先生方に集まっていただき、フォニックスの勉強会をした。終了後のある先生のコメントが忘れられない。「子供のころにこのような勉強ができたら英語で苦労はしなかったのに!」味方を得た思いがした。何事においても新しいことを導入する時は賛否があるのは常である。先ず、担任の先生方の理解と協力は不可欠である。そこで、次のような内容のお手紙を出した。
先ずは、フォニックスの基礎指導のために貴重なお時間をいただいたことへの感謝。そして、限られた時間の中で、私が考えている指導内容と手順について、そしてその効果と成長の確認方法などについて。指導内容は、音声指導(音素)、読むこと(3文字単語:子音+母音+子音)、聞くこと(CDを聞いて最初の音、最後の音を聞き取る)など。小学校では音素に意識を向けるような学習は多く行われていないが、そのような活動を行うことは必要であること。何故なら、音素を聞き分けられる能力は、読む能力、聞き取る能力、伝える能力など、全ての能力の基盤と言えるので。指導方法は、日本人の児童に適合した音素認識システムですること。言い換えると、アルファベットの一文字毎に音素を学習するよりも、日本人の音素認識の基本である2文字(子音+母音、母音を除く)をベースにして指導するほうが分かり易くて効果的だと考えられること。これは、20年間の私の英語教室と10年間の私立小学校でのフォニックス指導の経験を通して得た結論であること等を伝えた。
2023年10月スタート
いよいよフォニックス指導がスタートすることになった。先ず、スタート時点での児童たちの学習レベルを把握する必要がある。4年生児童のレベルは、アルファベットの小文字を学習し始めるところであった。3年生の時に大文字を既習していたので、タイミングとしては理想的であった。4年生の授業の中で年明けの2月まで、回数にして17回、毎週の授業の中で約10分をいただきいよいよ実践に移す時が来た。フォニックス指導で一番難しいのは、児童が聞き取れなかったり、聞き間違った時である。単に答えを教えることは指導にはつながらない。なぜなら、なぜ聞き間違いなのか言葉では説明ができないからである。そこに「英語耳」を育てる難しさがある。少人数での指導経験は多少あったが、30数名のグループの経験は初めてだった。正直いって不安な気持ちを抱きながら、私が投げる球に児童たちがどのように反応するのか楽しみなスタートとなった。
1か月目(2023年10月)
4年生児童の学習状況は、Let’s try!のUnit5、ちょうどアルファベットの小文字を学習するところであった。願ってもないタイミングであった。先ず大文字の復習から入ることにした。児童も大人と同じように忘れるものだ。次に小文字の名前読みの練習に入った。大文字と形が同じもの違うものを確認しながら、a~zまで一つ一つ練習をした。例えば、aは/e:/ではなく/ei/であること、エーと伸ばすのではなく小さい音のィが入るように。b, c, d, g等も同じ。その他、日本人にとって苦手な発音、c, f, l, m, n, r, t, v, wなど、口の形、舌の位置などを示しながら練習を繰り返した。fの発音の時に、細い紙切れを使って空気で揺れるのを確認した。この段階での重要な目標はアルファベットを正確に書けることである。書き順を渡して丁寧に書く練習をした。ある児童の文字は宙に浮いたり、下に潜っていた(潜るものもあるが)ので、線上に書くように指示した。書く練習の中で、間違った文字を見つけて正しく書けるか試してみた。やはり間違いに気づかない児童も若干いた。これから英語を身につけるうえで必須事項なので努力をするように念を押した。
さて、いよいよアルファベットが持つ音(オン)の学習に入ることにした。フォニックスの学習に抵抗なく入っていける方法を考えてみた。学習者にとって一番難しいのは、各子音が一つで音(オン)を持っていることである。a, e, i, o, uの母音は基礎中の基礎なので、先ず口の形を示しながら練習した。次に子音については、例えばdを/d/ではなく母音aと組み合わせてdaとして二文字ベースでの発音/dæ/にすることにした。qとx以外はこのように二文字ベースで練習すると、ほとんどの児童は抵抗なくスタートができた。これはローマ字風の発音方式に慣れているのが効果的に働いたようである。子音が持つ音(オン)に関しては、リスニングの練習の中で、音を耳で確かめながら学習する方が、意味のない音(オン)を覚えるよりも確実に身につくと考える。
2か月目(2023年11月)
いよいよCDを使ってのリスニングに入った。CDから聞こえてくる音を聞いて、最初の子音の文字を聞き取るのである。例えば、bananaの/bə/を聞いてbを聞き取る練習である。出来る限り児童たちが知っている単語を選ぶのが良い。アルファベットの正確な発音を集中的に取り組んでいたため、回答率は驚くほどよかった。なぜなら、英語の発音はアルファベット読みとフォニックス読みがミックスしているからである。最初の子音の文字を聞き取る練習を次の週も続けた。ここまでは、児童たちは予想以上に回答率は高かった。一人でも聞き取れなかった場合は、本人が聞き取れるまで繰り返し練習をすることが肝心である。今度はCDを聞いて、最後の子音の文字を聞き取るという難しいレベルに挑戦させた。これも2週続けたが、予想通り回答率は60%ぐらいまで落ちた。特に苦戦したのは、どちらも破裂音であるbとp、 /p/ と /b/である。/d/と/t/も同様に苦戦した。2度3度繰り返し聞かせたが、聞き取れたという児童は若干増えただけであった。無理もない、単語の最後の音は消えそうなほど小さくなりがちである。ここで一つ注意しておきたいことがある。時々、私は聞かなくても分かる、スペルを知っていると主張する児童がいる時がある。スペルを既に学習している児童がいる。フォニックスを学習する時は、かえってスペルを知らない方が良い。なぜなら、あくまでも音声からスペルを聞き取る訓練なので、知っている児童は聞こうとするエネルギーが削がれがちになり良い結果に結びつかない可能性がある。
この時点で、担任のA先生から「フォニックス指導は本当に必要ですか?」という質問を受けた。無理もない質問だ、まだ具体的な成果には結びついていないので。A先生のご理解を求めて、次のような内容でお返事をした。
「新学習指導要領では上学年を対象に音声指導(フォニックスと言う文言は使用されていません)が取り入れられています。私が知る限り、それはチャンツと音を聞いてのドリルが中心で、生徒たちはデジタル教材の音や、NSの発音を聞いて、オウム返しに声を出しているだけです。これでは折角新しく取り入れた音声指導の効果が出ていないように感じます。音を聞いてのドリル自体は意味があると思いますが、ドリルをする前に音と文字(つづり)の関係を明示的、系統的に指導するべきだと考えます。これをせずにドリルをすると、正確に発音ができて、聞き取れるのは一部の耳の良い生徒だけだと思われます。日本人教師が分かりやい平易な言葉で音の出し方を説明することで、生徒たちは発音の仕方を理解することができると考えています。特に、母国語の発音方法との対比を通じて説明することで、日本人教師はネイティブ教師よりも効果的に指導できる可能性が大いにあると考える。ー中略ー そして、フォニックスの基礎を身につけると、聞いて話すだけではなく、読んで書く力を伸ばせる可能性が大きくなる。」と。
この質問をいただいた翌週に、私は具体的な成果を見せようと思い立った。いずれ児童に挑戦させる予定でいた訓練、3文字単語(CVC:子音+母音+子音)の読みに挑戦させた。例えば、bag, big, cat, cup, dog等。最後の子音の発声はまだ正確ではないが、ほとんどの児童が読む(発音する)ことができた。児童も担任教師も私も、やった!という表情になりました。気のせいかもしれないが、担任先生の表情がそれ以降明るくなったような気がしている。
3か月目(2023年12月)
今回のフォニックス指導の山場にさしかかった。母音を聞き取る訓練である。a, e, i, o, uが聞き取れるかどうかの訓練である。先ず、「a」からスタートした。方法は、単語をランダムに流してa/æ/の音が含まれているかどうか聞き取る訓練である。正解率50%を満点に設定し、児童たちにもそう伝えた。1回目の挑戦を終えると児童たちの表情は暗かった。児童たち本人がその難しさを体験した瞬間だ。「がっかりすることないよ、君たちはとても難しいことに挑戦しているのだよ」、と励ましてみたが悔しそうな表情は変わらなかった。さて、もう一度同じところを聞いてみる。一つずつ聞いて確認していくと、なるほど納得と言う表情を見せる児童が増えた。しかし、納得した表情が見られないときは、私自身が少しオーバーに発音して聞かせた。特に混乱したのは、/æ/と/ʌ/の音の認識であった。子音で言えば lとr、bとvも同様に日本人にとっては聞き取るのは難しい。
今週は順番として、「e」 に進む予定だったが、その前に苦戦した「a」を復習した。そして、「a」ほどでもないが「e」も多少苦戦した。どの音と混乱したのか明確な傾向は認められなかった。単語の最初に「e」の音が含まれた場合は、正解率は非常に高かった。クラスによって進度さが出た。12月最後のレッスンでひとクラスが「i」まで進み、ふたクラスは「e」で終わった。So far so good!
4か月目(2024年1月)
さて、約3週間の冬休みが終わり、新年最初のクラスが始まった。3週間も英語に触れずにいると児童たちは恐らく母音が持つ音(オン)も忘れているだろうと不安な気持ちで復習から始めた。驚いたことに、どのクラスも「a, e, i, o, u」の音を正確ではないが、できる限り学習した通り思い出しながら声に出してくれたのは嬉しかった。そして、昨年末の最後のリスニングの復習から入った。復習の後、ひとクラスは「o」から、ふたクラスは「i」から取り組むことにした。その前に、私は児童たちにお願いをした。「今、君たちが挑戦していることはとても難しいことです。聞き取れなかったり、聞き間違がってもがっかりしないで欲しい。できれば50%の正解率を目指して欲しい。今の努力は、5,6年生になると必ず役に立ちます。そして約束をして欲しい。聞き取れなかったり、聞き間違った時に、よし先生に教えて欲しい、どのような音に聞こえたのかを教えて欲しい。」と。そして、一人でも聞き取れなかったり、聞き間違った場合は、時間が許す限り何度も聞き直して、本人が聞き取れるまで練習をした。そして、児童本人が聞き取れた時の笑顔と、周りの児童たちの暖かい拍手がとても印象に残りました。
聞き取れる確率は、その母音の位置が単語の最初の場合(elephant, insect)は高くなり、最初に来ない時は(pin, pen, hat)低くなる傾向がみられた。そして、児童たちが一番苦戦したのは、予想通り/ ʌ/の音の聴き取りであった。例えば、sun, can, run, busなど、/ ʌ/ の音と/ æ/の音との聞き分けられない児童が多くみられた。時間が許す限り、何度も聞き直して練習をしたが、児童本人が納得できないケースもありました。
5か月目(2024年2月、最終月)
いよいよ最後の月を迎えました。進度については、3クラスの中で多少の差はありましたが、母音の聴き取りについては、予定通り全てを終了した。そして、2クラスは復習を少しする余裕もありました。
さて、いよいよ最後のクラスとなった。少しでも先に進むか、3文字の単語(C+V+C)の読みに挑戦するか、児童たちの希望を聞いてみた。すると、どのクラスも大半の児童たちが後者の3文字単語の読みに挑戦したいとのことであった。児童たちの表情から、読みに挑戦したいという強い気持ちが伝わってきた。やっと、フォニックス指導が目指すスタートラインに立った思いがした。担任教師から約20分の時間をいただいて児童たちに挑戦させた。bagから始めてzipまで約40枚のカードを使用して、読みと意味を問うてみた。90%以上の確率で児童たちは次々読んでいきました。発音も5か月前と比較すると随分と上手になり、児童たちはスポンジが水を吸うが如く音を吸収していた。既習の単語であれば発音できれば意味はすぐに理解できるが、初めて習う場合もあるのでカードの裏面に絵を描いておいた。読めた時の児童たちの自信たっぷりな表情に頼もしさを感じた。5,6年生に進級しても自信をもって英語と取り組むことができることであろう。
児童たちへのアンケート
アンケートの結果
校長先生にお願いをして、今回のフォニックスの学習について83名の児童らにアンケートをとらせていただいた。部分的に無回答が見られたところは、実際の回答数で集計した。
その質問の内容は、
1.よし先生のレッスンは楽しかったですか。
2.アルファベット(a~z)の発音は上手にできるようになりましたか。
3.母音(a, e, i, o, u)を正確に発音するのが難しいと思いましたか。
4.ネイティブの音を母音別に聞いたとき、その母音が含まれているか聞き取れるようなりまし たか。
5.3文字(例えば、dog)の単語であれば、発音できるようになったと思いますか。
6.今までより英語の発音が上手にできるようになったと思いますか。
7.よし先生のレッスンを受けて、感想、意見、質問など自由に書いてください(無記名)。
1.「フォニックスのレッスンは楽しかったか」については87%(82名中71名が回答)の児童が「楽しかったと思う」「少し思う」と回答した。かなりの児童が楽しく学んでくれたようだ。
2.「アルファベット26文字の発音が上手になったか」という質問に対しても「上手になったと思う」「少し思う」と回答した児童が90%(83名中75名が回答)になった。フォニックス学習の基礎になるので各アルファベットの音の出し方を明示的に説明し、練習を繰り返した。
3.「母音(a, e, i, o, u)を正確に発音するのは難しいか」については、「母音の発音は難しいと思う」、「少し思う」の合計が57%(83名中47名)であった。一方、「ふつう」、「あまり思わない」の合計が43%(83名中36名)であった。やはり、日本人学習者にとって母音の発音は特に難しいことが分かった。しかし、36名の児童がやればできる感触を与えてくれた。時間が許す限り、練習、復習を繰り返したが、今後の課題として取り組みたい。なお、子音が持つ個々の音は、リスニングの練習の中で耳から学習するのが初心者にとっては学び易いと考えている。意味を持たない子音の個々の音素を記憶するのは難し過ぎると思う。この段階では、アルファベットの名前読みを正確に身に付けることを優先する方が、フォニックスを学習する時に役立つと考える。
4.次に、「CDでネイティブの音を母音別に聞いたとき、その母音が含まれているかどうか聞き取れるようになったか」に対しては、「母音の音が聞き取れるようになったと、とても思う」、「少し思う」の合計が91%(77名中70名が回答)であった。予想外の嬉しい結果だった。フォニックス学習の目的は、「文字の音」を学習して読めるようになることである。しかし、音を聞き取る力、リスニング力にも効果があることが分かった。正確に発音ができれば聞きとれる確率は上がると思われる。abc26文字の名前と、2文字(母音+子音)ベースの発音練習を終えると、リスニング練習に入ることを勧める。そして、並行して3文字単語の読みに進むのが理想だと考える。
5.「3文字の単語(たとえば、dog)であれば、発音できるようになったか」の問いには、「3文字単語を発音できるととても思う」、「少し思う」の合計が83%(83名中69名が回答)であった。練習時間が十分にとれず心配していたが、予想以上の嬉しい結果であった。「音と綴りの関係」を意識し始めている証拠と言える。2月の最後のレッスン時に、児童の希望で全てのクラスが3文字の読みに挑戦した。その時にアンケートをとっておれば、「とても思う、少し思う」の数字は確実に上がっていたであろう。読めた瞬間に多くの児童たちが、自信に似たような表情を浮かべたのが印象的であった。
6.最後の質問「今までより英語の発音がじょうずにできるようになったか」に対しては、「発音がじょうずになったととても思う」、「少し思う」の合計が95%(80名中76名が回答)であった。発音の大切さを強調してきた指導者として、嬉しい結果であった。英語嫌いになる理由の一つとして、発音が難しいからというのがよくある。一人でも多くの児童が英語好きになって欲しいと願う。
7.そして、フォニックスのレッスンを受けてみて、感想、意見、質問などを自由に書いてもらった。貴重なコメントをたくさんもらったので、その中からいくつかを紹介する(順不同)。
3-2: 児童たちの声
「前よりも発音が少しできるようになってよかったです。これからもがんばります。」、「レッスンで前より母音が聞きとれたりするようになりました。」、「発音の仕方を教えてくれて発音が上手にできるようになれたので良かったです。」、「聞きとるのがむずかしかったけどたのしかったです。」、「よし先生の授業はとても楽しいけど、聞き取るのはあまりうまくできませんでした。」、「文が長い英語を読み取るコツを教えてほしいです。」(クラスで私の考えを伝えた)、「もともとあまり英語がとくいじゃなかったが、レッスンを受けてとても楽しく、きれいに発音できるようになった。宇宙飛行士のゆめにつながったと思った。」、「英単語が前より読めるようになったので、よし先生のレッスンを受けて良かったなと思いました。」、「すごくわかりやすいレッスンを受けて、いろいろな音が聞きとれるようになりました。それをいかして5年生でもがんばります。いままでありがとうございました。」、「よし先生が、いつも発音を言ってくれる時に、いつも口を見せて「口はこんなふうに動かすのだよ!」などを言ってくれるから、とても分かりやすいです。それに、前よりもっともっと発音がうまくなりました!!」、「今まで単語を読むのが下手だったけど、先生が一文字一文字に音があるとおっしゃったので、覚えてみると発音も聞く力もグングンのびたし、単語を読む事ができて、書けるようになりました。Thank you!」、
私の指導法
現状について
日本人はなぜ英語が苦手なのかについては、長年にわたり議論されてきましたが、未だに具体的な解答には至っていない。永遠の課題かもしれない。多くの日本人が8年以上もの間、中学校、高校、大学で英語と取り組んできたにも拘わらず、聞けない、話せないという状況にある。では、なぜ話すことが苦手なのか?それは、話す努力が足りないからではなくて、聞く訓練が不足しているからだと考えられる。文字で書いてもらえば知っている単語でも、音として聞いた時に聞き取れないケースが多い。文脈から意味が分かる場合もあるが、音からスペルが推測できないのが主原因だと考えられる。相手の言っている内容が聞き取れなければ、会話は成り立たないし、続かない。聞く力を持たないままコミュニケーション力(自分の思いや考えを伝える、質問する、答える)を身につけようとしても、限定的な進歩しか期待できない。日本人にとって英語を習得するには、先ず英語を聞き取れる「耳」を創る努力をしながら、「耳」で学ぶのが一番の近道だと私は考える。「耳」で学ぶとは、日本人の赤ちゃんが周囲の大人たちの話す音を聞きながら、徐々に母語を理解していくプロセスを指す。このプロセスは理想だが、我々の対象となる児童は早くて8~9歳になる。小学校の中学年や高学年を対象に、「耳」から学べる教材、カリキュラムが必要になる。
目標設定
目標は、
- アルファベット26文字、大文字・小文字を正しく発音ができる(読める)、丁寧に書ける、名前を聞いて正しく書けるようになる。
- 3文字単語(CVC)を発音できる(読める)ようになる。
- 短い単語を聞いた時、そのスペルが推測できて書けるようになる。
- カタカナ英語から離れ、英語らしい発音ができるようになる。
指導内容と順序
スタートの第一歩は、中学年から(現行ではアルファベットの大文字・小文字を学習する時期なので)、アルファベット26文字の名前読み(aを/ei/と読む)と書き方から始め、児童たちに正確な発音力を身につけさせることだ。アルファベット26文字の発音は、フォニッゥスを学習する時の基礎として大いに役立つ。ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して欲しい。それができれば次に、母音(a, e, i, o, u)が持つ音を正確に発音できるまで練習をする。そして、母音(a)と各子音の2文字の組み合わせの発音の練習をする。例えば、ba, ca, da等。この2文字の練習はローマ字の読み方と似ている(英語の発音とは異なるが)ので、児童にとって取り組みや易い。この方法であれば、最後のzaまで児童たちは比較的抵抗なく発音ができるようになる。もちろん、指導者として各組み合わせ(baからzaまで)を正確に発音して、児童たちに練習を促さなければならない。この段階の目標は、母音aとの組み合わせだけではなく、他の母音との組み合わせも練習することも大事である。
さて、ここで指導者として難しい課題に直面する。それは、児童たちにアルファベットの個々が持つ音を如何に提示し、身に付けさえることができるかである。担任が一人でする場合の不安は「発音」に関することであり、「綴りと音」を結びつけるには正確に「音」出す必要がある。日本人学習者に広く使用されている方法の一つに、シンセティック・フォニックスがある。多くの児童は十分に語彙を持っていない(持っている場合はアナリティクス・フォニックスが使用される)ので、単語を構成する音素とその代表的な1文字または2文字の綴りと対比させていき、無意味語も含め、音を足して読んでいく方法である。これは、アルファベットが持つ個々の音(音素)の読み方を練習した後で、合成された単語をそれぞれの音素を組み合わせて発音する方法である。例えば、dogと言う単語は「d」,「o」,「g」という3つの音素からできている。しかし、シンセティックフォニックスをそのまま小学生の児童に使用するのは勧められない。理由は、日本人にとって子音と母音を切り離して認識することはとても難しいからです。多くの日本人には「do」は1つの音として認識する傾向にある。初心者にとっては、フォニックスを学ぶ基礎である5つの母音は別にして、子音が持つ個々の音素を最初から覚えるのは非常に困難であり、かなりの負担なると思う。フォニックスの基礎を学ぶ順番として、母音+各子音の2文字の組み合わせの発音を最初に勧めるのは、これらの理由からだ。
それでは、個々の子音が持つ音をどのように身に付ければ良いのであろうか、身に付けることができるのであろうか。焦る必要はない。無意味な音素をチャンツやCDを聞いて覚える方法があるが、それよりも確実に記憶に残り、スペルの推測にもつながると思われる方法がある。それは、3文字の単語を読むことに挑戦させるプロセスで指導できる。2文字ベースの読みに慣れてくると、3文字の単語を読むことに挑戦するのが良いと考える。3文字単語を読むときに、指導者が子音の音を児童に聴かせ練習する程度で良いと考える。たとえば、catの「t」、dogの「g」、bedの「d」、penの「n」、capの「p」など。指導者ができる限り正確に子音の音素を発音して練習すると良いと思う。このように、文字と音の関係が分かり始めると、多くの生徒はフォニックス指導の最初のゴールである3文字の単語を読めるようになる。そして次に述べるリスニングのドリルを通して子音の音素を身に付ける方法がある。
次に、文字と音の関係を学習しながら、「聞く」耳を育てる練習に入るのが理想的だ。この「聞く」トレーニングの目的は、英語の音を聞き取れるための「耳」を養成すること。一定の発音レベルが達成できれば、「聞く」トレーニングに入る準備ができる。英語は日本語と比較して音域が高く、同じ音が存在しないため、多くの児童が苦戦を強いられる。最初のリスニングの挑戦は、子音の音を聞き取るドリルが取り組みやすいと思う。児童の知っていそうな単語を選び、CDを聞いて最初のアルファベットを聞き取ったり、最後のアルファベットを聞き取る練習をする。この場合、単語の文字数は3文字と限らなくてよい。例えば、最初の文字 banana, girl, pencil, 最期の文字 rabbit, cap, bird等。初めての挑戦の時は、答えとなるアルファベットを示し、その中から答えを選ぶ形式を勧める。この方法が、私が勧めする子音の個々の音素をリスニングから学習する方法である。意味のない音素を丸暗記して読みにつなげるより、児童たちにとってはるかに取り組みやすいことと、集中して聞くので「耳」が育つと考える。
さて、いよいよ母音の聞き取りの練習に入ります。基本的にはCDを聞いて、どの母音なのか聞き取る練習と指定の母音の音が含まれているか、いないかを聞き取る練習が考えられます。どの母音が含まれているかの練習は、先ず母音が単語の最初の位置に来る場合が考えられる(文字数は3文字以上でもよい)。elephant, apple, octopus, insect, umbrella等の単語が良い。次に、3文字単語の真ん中に位置するケース、map, pet, six, fox, sun, jam, hen, wig, log, cup等たくさんある。
このように、CDを聞いて、最初の文字、真ん中の文字、最後の文字などを聞き取る練習が効果的だ。これにより、26文字のアルファベットが持つ音を聞き取ることができるようになる。言い換えると、音からスペルを推測できるようになる。つまり、音を聞くだけでスペルが分かり、既習の単語であれば意味が理解できる。そして、耳で聞き取れると、この力が単語を読む力に繋がっていく。フォニックス指導の上で重要な点を繰り返すが、ネイティブが聞いて問題ないと認めるレベルの発音を目指して練習して欲しい。発音のレベルがその域に達していない場合、ネイティブの音を聞いた時に本人が認識している音と一致しないため、聞き取ることが難しくなる可能性が高くなる。(文脈から推測できる場合もあるが)。以上のことから、このような素晴らしい効果をもたらすフォニックス学習を取り入れない理由は何もないと考える。日本人学習者にとって、フォニックス学習は大きな武器となり得る。繰り返すが、ネイティブが聞いてOKが出るレベルの発音を目指して学習して欲しい。なぜなら、発音は相手に正確に伝えるだけでなく、聞き取りの際にも大きな影響を与えるからだ。今年は2020年の導入から5年目にあたるので、文部科学省や教育委員会には過去の検証を基に、必要に応じて大胆な改善を行って欲しいと切望している。なお、フォニックス教材や指導方法の例については、約20年間にわたり私の英語教室で使用していたものである。
フォニックス指導書の作成を目指して
それでは、長年教室で使用させていただいた教材(Sounds of English, パシフィックイングリッシュクラブ, 2001)を参考にして指導書を作成してみる。一人でも多くの児童や指導する先生のお役に立てれば嬉しい。
ここからは、使用する教材(Sounds of English)と前述の指導内容に沿って、担当教師ができる限りスムーズに授業を進められるように具体的に述べていく。対象児童は4年生。時間数は各授業の中で10分、回数は20回、計200分とした。なお、繰り返すが、これらは2023年10月から約5か月間、フォニックス指導の実体験に基づいたものである。
①:前章の目標の正確な発音を達成するために、アルファベット26文字の発音の練習から入る。大文字小文字のどちらを使用してもよい。アルファベット読みはフォニックスの基礎になる。何故なら、英語の発音はアルファベット読みとフォニックス読みがミックスしているからである。正確かつ明示的に音の出し方を見せて、聞かせて、繰り返し練習する。最初は、T(teacher)が発音のお手本を見せてSs(students)は真似て声に出す。次は、SsがTの指すアルファベットを発音する。慣れてくると、ランダムに指して発音させる。DVDを見ながらチャンツで練習するのもよい。Tの練習教材としてhttps://www.youtube.com/watch?v=vuzUmRcw0VQとhttps://www.youtube.com/watch?v=p7KBM7L0tPQ&list=RDCMUCm0GSrLRsbS_zg3uTydMpnw&index=3
を勧める。日本人講師が分かりやすく説明している。You can do it if you try!
②:アルファベットの名前読みが正確にできると、書く練習に入る。転写から入り、丁寧に書くように念を押す。基本的に、線上に書く事、背の高い文字、ラインの下にもぐる文字に注意し、そして誰が見ても読めるように丁寧に書くように指示をする。書き順を示す補助教材や練習用の用紙を準備する。書き写しの練習をするときに、26文字の中に間違いを入れておき、間違い探しをしながらドリルをするのもよい。時間はかかるが、Tは一人一人の出来栄えをチェックし、ほめたり、アドバイスをするのが大事。何事も最初が肝心である。
次は、英語の音を聞いて、どのアルファベットであるかを認識し、その文字を書けるようになることを目指す。アルファベットの名前を聞いて、どのアルファベットであるか認識するのは児童たちにとって意外と難しい。その方法の一つとして、Ssにアルファベット26文字のカードを事前に机の上に並べさせる。そして、Tが読み上げるアルファベットを聞いて、分かったSはそのカードをとって上に掲げる。そのスピードを競うのも楽しい。アルファベットビンゴもゲームとして楽しく学べる。今度は、Tが読み上げる文字を書く練習をする。a, h, x,は発音も比較的簡単なので聞き取れるが、発音の仕方が似ているアルファベットの聞き取りは難しい。例えば、bとv、dとt、gとz、tとpなど。ここで差が出るのは、児童本人が正確な発音が身についているかどうかである。私の経験からは、ネイティブが聞いてOKがでるレベルの発音ができる児童の聞き取れる確率は高い。その理由は、本人が認識している音と合致するからである。発音の重要性が試される最初である。
③:次は、順番として母音の発音に入ることを勧める。日本語の母音は「あいうえお」の5つだが、英語の場合は短母音、長母音、2・3重母音を合わせると約26個、子音の合計は24個あるといわれている。ここでは、母音の中の短母音、[a, e, i, o, u]に絞り徹底的に練習をする。指導者として、5つの母音の正確な発音が求められる。子音に関しては、前述の指導内容と順序のところでも触れたが、無意味な音素をチャンツやCDを聞いて覚える方法はあるが、焦る必要はない。CDを聞いて最初の音や最後の音、3文字単語の読みに挑戦するときに音として聞かせて、耳から徐々に慣らしていくのが良いと考える。児童たちには、「英語の母音が身につくと短い単語を読めるようになるよ、発音も英語を話す児童たちに近づけられるよ」と伝えてヤル気を起こさせることが大事。それではSsとのキャッチボールを始めよう。カード「a」を見せて、この名前は何?とTは質問をする、Sが「ei」と答える。続けてTは先ず/ æ /と発音をして聞かせる。appleの/æ/は日本語の「ア」と「エ」を同時に発音する。そして、リズムをとりながら、Tは「a」/æ /と名前と発音を同時に(エィ、ア)と発声する。SsはTが言ったことを「a」/æ/と真似て発声する。以下同様に、名前と発音を同時にリズムよく発音をしてSsに真似るように促す。「e」はeggの/e/口の形は横に開く、「i」はinkの/i/口の形は/e/で発音する、「o」はoctopusの/o/唇を突き出し丸めながら、日本語の「オ」を短く、「u」はumbrellaの/ʌ/口をあまり開かず驚いた時の「ア」と短く発音するとよい。母音の練習に関しては、ランダムにTが指さしてSsが正確に発音できるまで、毎週繰り返し練習をすること。特に、/æ/と/ ʌ/は、違いを聞き取れるまで練習をすること。
④:いよいよ、『Sounds of English』(パシフィックイングリッシュクラブ, 2001、今後SOEと省略)に沿って、「発音力」と「聞く力」を並行して養成するためのドリルに入る。先ず、母音「a」と各子音の2文字の組み合わせのドリルだ。例えば、ba, ca, da等。SsはSOEのp1とp2を見ながら、母音「a」と各子音を組み合わせた発音をCDで聞く。一二度聞いた後、CDに合わせて練習するとよい。母音、q, xを除いて、全て「a」と組み合わせて発音しているが、最初から答えを言わずにSsに尋ねてみるのも良い。ここでのゴールはSsが独自で最後まで言えることである。次に、p1のB(Listen and circle the correct letters)とp2のC
(Connect the dots starting with the small letter a)をする。大文字、小文字それぞれを順番通りにつないでいくと、あるものが現れる。
⑤:ここからは、子音の音を聞き取る練習に入る。前述した通り、母音の音はフォニックスを学習し始めるには不可欠であるが、子音が持つ個々の音に関しては焦らずリスニングの過程で徐々に身に付けるのが良い。CDを聞いて最初の音や最後の音を聞き取るのである。p3はBeginning Sounds、p4はEnding Soundsを聞き取るドリル。音からどのアルファベットかを聞き取るわけだが、単語の意味が分からなくても絵と答えの中からアルファベットを選んで結ぶことで、Ssは楽しく学習できる。CDからは時々楽しい擬音が聞こえてくる。各ページの下のところにアルファベットの大文字と小文字をもう一度練習する欄がある。
p5とp6も子音のBeginning SoundsとEnding Soundsを聞き取るドリル。答えは3択になっているが、絵が添えてありなかなか楽しい。アルファベットを書く練習する欄がページの下のところにある。時間はかかるが、TsはSsが丁寧に書いているかどうかチェックして欲しい。
p7は子音のBeginning Soundsを聞き取るわけだが、絵が順番通り並んでいない。音の塊を聞いて、その意味を知らない場合は難度が増す。p8は子音のEnding Soundsを聞き取る練習。ここもp7と同様の事が言えるが、単語の意味を再確認したり、初めて単語と出会い意味を知る機会にもなる。
⑥:順番としてはp9の指定のアルファベットの音が聞こえてくる単語の中に含まれているか、聞き分けるドリル。しかし、指導記録の中で述べたようにSsの回答率は低くかなり苦戦をしたので、すぐにp9-p11に行かずに、p12の短母音の聞き取りの復習をしてからのほうがSsの苦戦は少なくなると考える。そしてp9~p11に戻るわけだが、指定の母音がCDから聞こえてくる単語の中に含まれているかどうかを聞き取る難度は非常に高い。特に、/æ /と/ʌ/は苦戦する。/e/と/i/も同様に苦戦するので、十分時間をかけてすること。聞き間違った箇所は、時間が許す限りSsが聞き取れるまで繰り返すとよい。指定された母音が、単語の最初に位置する場合は正解率は高く、2つ目若しくはそれ以降にある場合は低くなる傾向がみられる。
⑦:p13-p16はmissingしている子音を聞き取るドリル。子音の音を身に付ける方法は、日本では意味のない音を暗記するのが主流であるが、日本人の児童にその方法を私は勧めません。耳から聞き取り身に付けるほうがストレスも少なく自然に定着すると考える。P13とp14は、答えとなる小文字が上にリストされているのでその中から選択する。全てCVC(子音+母音+子音)の3文字単語で、最初の子音を聞き取るドリル。ここでは既習の子音+母音が大いに役に立つ。Tは正解の子音の音を2,3度繰り返しSsに聞かせるとよい。繰り返すが、児童は意味が分からなくても絵から推測できるように工夫されている。p15は,やり方は同じだが、単語の最後の子音を聞き取るドリル。そしてp16は単語の最初の子音を聞き取るドリル。
⑧:さて、この辺りまで来るとSsは「読んでみたい」、「発音してみたい」という興味が湧いているに違いない。フォニックスの本来の目的である、「読み」に挑戦させよう。初めての挑戦なので、1週リスニングをお休みして、「読み」の導入に集中しよう。2週目からは、「リスニング」と「読み」を同じ授業の中でできるように工夫しよう。それでは、「読み」への指導方法について私の考えを述べてみる。対象となる単語は、C+V+Cの3文字単語だ。読むための基礎は、母音と子音の2文字の組み合わせが基本となる。例えば、「b」の子音と各母音を組み合わせると、ba, be, bi, bo, buとなる。先ず、Tはこれらを正確に発音してSsに聞かせる。Ssはその音を真似て正確に発音できるまで練習する。黒板にアルファベットa,e,i,o,uのカードをはって、「b」のカードを母音のカードに合わせ移動しながらTが発音し、それを真似てSsが発音する。最後の仕上げは、SsがTのヘルプなしで発音できるまで練習する。それでは、Ssに3文字単語の「読み」へ挑戦させよう!Tが準備するのは、3文字単語のカードと裏側に絵が描かれているカード。bagを例にとると、表はbagの文字、裏はbagの絵である。Ssは2文字/ba/の発音はできるはずだ。/g/については、子音の聞き取りのところで出てきたので、読める確率は高い。念のため/g/の発音に関してはTが正確に発音して聞かせること。そして次に意味を尋ねて少し間をおいて裏を見せる。発音ができても意味が分からないSsにはカード裏の絵がヒントになる。「b」で始まる3文字単語は、bed, big, box, bugなどがある。やり方はbagと同じである.ただし、各母音の音には十分に注意して指導して欲しい。特に/æ/と/ʌ/の音の違いに。以上が基本的な私の「読み」への指導法である。なお、C+V+Cの3文字単語の選択については、できる限りSsが知っていそうな単語を探してほしい。ただし、子音の全てが母音と組み合わせることができない。私はパシフィックランゲージクラブの3文字単語カードを活用させていただいている。
⑨:「読み」への挑戦に関しては、「b」を例にとって説明をした。指導方法は「c」から「z」まで」同じ方法でよい。教材のカード作成に時間がかかるが努力をして欲しい。楽しくてユーモアがある絵が望ましい。「読み」への挑戦は、カードを事前に準備しておき、私は子音のアルファベット順に進めた。2回目以降は、リスニングの時間と調整をとりながら、最初はゆっくりと進めた。読めた時のSsの目は輝き「読めたぞ!」という表情は印象的であった。それでは、SOEのp17に戻る。母音の復習で、3文字単語の真ん中の母音を聞き取るドリル。p18も2者選択になっているが、真ん中の母音を聞き取るドリル。p19は選択肢がなく、真ん中の母音を聞き取るドリル。ここまでくると、お気づきの方もいるかもしれないが、同じ単語が繰り返し出てくる。同じ単語を2度3度繰り返すことは記憶を上からなぞることになる。児童も大人と同じように忘れるので、鉛筆書きの記憶をボールペン、できれば印刷できれば理想だ。時々あるが、「聞かなくても答えが分かるよ」というSsがいる。これらのドリルは聞いて「耳」を育てるのが目的である。スペルを知っていると聞こうとするエネルギーが削がれてしまい目的が達成できなくなるので要注意。
⑩:p20は聞こえてくる音から綴りを聞き取るドリル。日本人学習者にとって不可欠なスキルである。日本人はなぜ英語が苦手なのか。その理由は、書き英語であれば分かるのに、音として英語を聞いた時に綴りが認識できないからである。フォニックスを学習し、正確な発音ができるようになるとリスニングも大いに役立つ。繰り返すが、フォニックスは「読む」「話す」「聞く」「書く」の4つのスキルに役立つのである。
⑪:p21はアルファベットを並び替えて3文字単語を作るドリル。最初の問題はo, g, dの3つの文字がある。絵が添えてあるので迷ったときにはヒントになる。クラスの中でアルファベットを黒板に貼って、3文字単語を作るゲームができる。p22は3文字単語のしりとりゲーム。発音ができるSsはスペルが推測できる。正確に発音ができることは綴りを書く時にも役立つ。ここでも絵がヒントとして活躍している。
⑫半は、c, g, sが持つ特別な音を聞いて練習する。今までは1字1音を学んだが、2つの音を持っている文字もあることを学ぶ。例えば「c」について、今まで習ったcatやcupのcの音と、cityやfaceの時のもう一つの音があることを学ぶ。4年生でここまで進むことができれば十分だと考える。最初に、時間数を各授業の中で10分、回数は20回、計200分としたが、正直言って各授業の中で15分、回数は20回、計300分は欲しい。時間不足の場合は、必要不可欠なページを選択しながら進めるしかないと思う。
⑬:さて、Ssたちは3文字の単語が読めて書けるようになった。文も少し読めるかもしれない。そして、発音も英語らしい発音ができるようになり、英語耳の基礎ができたと思われる。小学校のフォニックス指導の理想は、「Sound of English」の後半に進み他にもある英語の音(オン)を学習することである。その内容を簡単にいうと、bl, cl, dr, sn, tr等、子音の二文字を一つの音(オン)、として練習することである。いわゆる「Blends」と呼ばれ、子音が2つまたは3つ連続したとき、もとの音を残しながら混ざる(ブレンドされる)音のルールである。これらを正確に発音したり、そして聞き取ることは日本人学習者にとって大変難しい。日本語と英語との音域の差が大きいのも原因の一つである。小学5,6年生では音声指導が更に強化されていくので、Ssたちの耳の機能が退化し始めるまでに「Blends」の学習もお手伝いしてみたい。
おわりに
私は今回の指導書づくりにあたり、第一に、日本人児童に向いたものを作りたかった。第2に、日本人教師が実践可能な指導法を作りたかった。そのため、多くの英会話教室やフォニックスをすでに導入している小学校とは内容的に違ったものとなった。また、新学習指導要領の目標よりさらに踏み込んだものになった。児童たちの無限の可能性を信じ、言語習得の「臨界期」と言われる9歳ごろまでに、遅くても小学3,4年生の時に音声指導を明示的にスタートして欲しい。そして、日本人教師でも十分にできる、いや日本人教師だからこそできることを理解し、挑戦して欲しい。発音に関しては、日本人教師でも十分に指導できる。児童の発音はどれだけネイティブの音を聴いたかが大切なのだ。CDやDVDの視聴覚教材を活用し、児童たちにたくさんの英語の音を聴かせられれば、スポンジが水を吸うが如く音を吸収する。失敗を恐れずに実践するのみです。
最後に、指導法の作成に「Sounds of English」( パシフィックイングリッシュクラブ, 2001)を使用させていただいた。日本人学習者にむいた教材を提供していただいたことに心より感謝したい。この教材は市販されていません。Copy Rightがあるので、ご購入の際は直接お買い求めください。
武田良則
2024年6月